ある時期から費用と時間に縛られない、私自身今まで作ったことのない凝ったお面を制作してみたいという気持ちが強くなっていました。
ちょうど2018年の秋頃、それを行動に移しました。
目次
コラボをしてくれる造形作家を探す
制作してみたいと言っても一誠技工舎でできることは、実際に工作する‘ 製作 ’の部分。
形を造形する‘ 制作 ’の部分を担当してくれる「相棒」を探さなくてはいけませんでした。
最上晃啓氏との出会い
そこで造形作家さん、特に新進のデジタル造形作家さんのチェックをネットで始めました。
経歴・作品、そして方針。
サイト・ポートフォリオを覗いていくうちにこんな文面に目が止まりました。
モノ作りに対する思いが決め手
‘25歳を過ぎた頃に初めて造形を勉強しはじめました。なかなかのスロースターターですが、その分モノ作りに対する思いは強いです。最高のエンターテイメントとしての造形を求めて日々精進しています。’
ある造形作家のSNSに書かれていた言葉です。
「モノ作りに対する思いは強い」。
私と同じ思いだ・・・。
すぐに連絡を取ってみました。
その方が、今回このお面を一緒に制作してくれた ‘ 最上晃啓 ’氏なのです。
遠距離でも打ち合わせを可能にしたビデオ通話
最上氏と一誠技工舎は遠距離にあり、スカイプを使っての打ち合わせが始まりました。
ひと昔前なら千数百キロもの距離を隔てて打ち合わせをするなどということは夢のまた夢でしたので、インターネット技術のありがたさを実感したものです。
費用をかけないで、コアな部分で勝負しよう
元々販売前提の制作は考えていませんでしたので、‘ 費用に縛られない ’と言っても費用は抑えなくてはいけません。
自分たちで行えることは限りなく行って、費用をかけずに最大限のパフォーマンスをするということにお互い異論はありませんでした。
造形と成形。
色付けなどの後加工ではなくこの2点で勝負をしようということになり、黒材料のみの成形で見せる「ゴリラ」を作ろうということになったのです。
(*掲載している画像は顔の中央部だけ艶消しの塗装を行っています)
製作過程
この制作・製作経過については、彼がZBセントラル(デジタルスカルプトソフトZbrushの制作投稿サイト)に投稿した文面を流用させて頂こうと思います。
(原文をそのまま掲載します。弊社への敬称はお許し下さい)
今回(株)一誠技工舎さまと共同でゴリラのお面を制作いたしました。
自分が担当したのはZBrushによるデジタル原型です。
データ作成後、一誠技工舎さまに3Dプリント用としてstl形式にしてお渡しし、それを元にケミカルウッドの削りだし~真空成形にて非常にリアルなお面として形にして頂きました。
大きさは縦26センチ×横17センチ×高さ7センチです。
原型段階で苦労した点は、ゴリラとしてはっきり分かる形状であることと人間がお面として被れる造形であることの両立です。
ゴリラの顔をそのまま模刻しても、人の顔に合う形状にはなりづらいです。
逆に人間の顔の形状に沿うように作ってしまうと、”人間感” が強く出すぎてしまい、ゴリラの顔として認識できなくなってしまいます。
ゴリラと人間の顔の最大公約数を探りながらの造形でした。
また、真空成形では逆テーパーが大敵です。
変化球的な使い方ですが、ZBrushのライブブーリアンで断面を表示させることで、その解消が非常に楽になりました。
データの切削・成形・仕上げをトータルで行っていただいたのは、一誠技工舎さまです。
完成品が原型のディティールを正確に再現できているのは、工具の選定から設定まで一貫し細部にわたって調整していただいた一誠技工舎さまの技量によるものです。
このお面は底面と上面の高低差があるため、成形段階で材質が伸び破けてしまう可能性もありましたが、それも見事に回避されています。
「これまでにないお面を作ろう!」との思いで一誠技工舎さまとスタートした作品制作でしたが、すごく満足のいくものを完成させることができました。
皆さんに楽しんでご覧いただければ幸いです。
最上晃啓(Akihiro Mogami)
https://akihiromogami.myportfolio.com/
https://www.instagram.com/akihiro_mogami/
成形加工のみでこんなに素晴らしいお面ができたことを、最上氏に感謝するばかりです